急な勾配を進むぞ木次(きすき)線

島根県

中国山地をスイッチバックで越えて行く

島根県松江市の宍道駅から広島県庄原市の備後落合駅を結ぶローカル線です。JR西日本でも最大規模のスイッチバック方式で、山越えをします。しかし、その存続が危ぶまれるほど利用率は低下しています。こういう老体化した路線に、今、乗ってみたいと思うのは、自分と重ね合わせた親近感があるのかも。

出発は、松江駅。西出雲行きの普通電車に乗ります。今日も、寝台特急サンライズ出雲は30分以上遅れています。

この電車に乗ります。10時を過ぎているので、もう通勤通学の乗客はほとんどいません。まず、山陰本線で宍道駅まで行きます。

トラブル発生

宍道駅で乗り換えます。これが、木次線のダイヤです。本当に少ない。でも、問題はそこではなく、今日が第二木曜日だということです。事前調査が甘かった。この時刻表をよく見ると、第二木曜日の午後は、木次駅から先は、運休となっています。アーー!どうする。スイッチバックは、木次駅の先にあるじゃないか! 目が覚めたと同時に少々パニックに。この旅の大きな目的だったスイッチバック体験が調査不足で水の泡になるのかーと。とにかく改札口に向かいます。

駅員さんに相談すると、木次駅から先は、第二木曜日の午後に線路の点検をするため、気動車を走らせず、乗客の対応として、タクシー(ワゴン車)で代替運転をするとのこと。さあー、迷った。気動車には乗れないけど、どうも線路はたどっていけそうです。もしこれに乗らなければ、もう一度松江に戻って、特急やくもで帰ることになります。それなら、もー、途中まででも木次線に乗ってしまえということで、もう一度ホームへ。のんびりと、1両編成の車両が入線して来ました。これです。

宍道駅から木次駅まで

内部は、横向きのシートのみでワンマンスタイルです。運転士の側に料金箱があります。始発からは、私を含め乗客は3名でした。

もちろん単線です。便が少ないので、線路には草が生えています。うーん。こういうのに乗りたかったんです。

こちらの方も、乗り鉄さんのようで、ワンカップを片手に楽しんでいるみたいです。

木次駅に到着しました。気動車はここから宍道駅に折り返します。

もう、話題づくりのためには、何でもやりますという感がありいいんじゃないですか。ここまで、宍道駅から約30分でした。

タクシーで駅めぐり開始

木次駅の駅舎です。外からその姿を見られるとは思っていませんでした。

タクシーでこの先を進みます。乗客は、3名でした。2名のJRの職員の方が添乗します。運転手さんと合わせて6人でスタートです。これは職員さんも大変です。

木次線は、芸備線の備後落合駅まで続きます。途中の出雲横田駅から先が、山間部の急勾配区間に入っていくようです。

タクシーは、ここから先のすべての駅を発車予定時刻に間に合うようにたどって行きます。その駅の中には、映画や小説で有名な「砂の器」に登場し、話が進展するきっかけとなる亀嵩駅(かめだけえき)もあります。駅名の表示は、昔のままでした。

駅から駅をたどるうちに、線路点検を実施しているJRの職員の方を見かけました。点検用のオープン車両に乗って走ります。こんな地道な作業が、必要なんですね。

社殿作りの出雲横田駅舎です。大きな注連縄も飾り付けられていて、他の駅舎とは風情が異なります。ヤマタノオロチ伝説に登場するクシイナダ姫に由来するとのことです。

ここから、スイッチバックが始まる出雲坂根駅に到着しました。

ホームから見ると、遠くにこれから通る国道のおろちループの赤い橋脚が見えます。あの辺りまで一気に登るんですね。線路もほぼ近くを通るそうです。

これがスイッチバックの線路です。左側でここまでやってきて、バックで右側の線路に入って行きそれを繰り返しながら、少しずつ標高を上げます。時速は25キロで走るそうです。自転車程度ですかね。

ホームにあった標識です。これから行く三井野原駅がJR西日本で一番標高が高い位置にあるそうです。

車は、おろちループを登って行きます。

山頂付近です。向こうの山肌を走るのが線路です。

ここが、三井野原駅のホームです。閑散としています。

今も、雪が積もるとスキー場になるそうです。リフトが見えます。

備後落合駅に無事到着。芸備線へ

タクシーの旅はここまで。JRの担当者の方にはお世話になりました。通行量が少ないため、気動車のダイヤよりタクシーの方が早めに次の駅に着くので、時間合わせの間、いろいろな実情話を伺えました。ありがとうございました。木次駅から備後落合駅まで約2時間半でした。

右が、ここから岡山方面へ向かう気動車。左が広島方面へ向かう気動車です。どちらも1両編成です。

新見駅経由で帰ることになります。岡山駅まで約3時間です。

備後落合駅を出発します。この駅も、風情があります。

乗客は、私を含め4~5名程度でした。途中、時間帯的に学生や通勤で利用する客も増えました。

この路線も、線路の勾配がきつく、かなり長い時間、時速25キロ程度で少しずつ登って行きました。

途中、ヤギの放牧場もあり、急いでカメラを出しましたがブレブレ。

新見駅で乗換え。少し時間があったので、外で食事を。何とか、無事帰れそうです。

木次線に乗ってみて(一部道路からの見学でしたが)、沿線の家屋は少なく、特に山間部に入ると利用客が少ない状態でした。昔は、高校生が通学にかなり利用していた時もあったそうですが、高校生自体も少なくなっているので、利用客増に期待が持てない状況です。JR西日本では、夏場には観光トロッコ列車を導入して人気があるとのことですが、いつかは、常時利用者が増えない状態について判断する時が来るのでしょう。それも時代です。今は、長い歴史がある木次線を見守ります。

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